相続という言葉は知っていても、具体的に「誰が相続人になるのか」「どんな財産が相続の対象なのか」を正確に理解している方は意外と少ないものです。
相続は人生で何度も経験するものではありませんが、いざという時に正しい知識がないと、家族間でのトラブルや手続きの遅延に繋がることもあります。
この記事では、相続が発生した際に知っておくべき「相続人の範囲」と「遺産の基本」について、初めての方にも分かりやすく解説します。
相続とは?
まずは基本をおさえよう
相続とは、亡くなった方(被相続人)の財産や権利義務を特定の人(相続人)が引き継ぐことをいいます。
相続は、被相続人が亡くなった瞬間から自動的に発生します。相続の対象となる財産は「プラスの財産(預貯金・不動産など)」だけでなく、「マイナスの財産(借金・未払金など)」も含まれる点に注意が必要です。
相続が発生する主なタイミング
主なタイミング
- 被相続人の死亡時(自然死・事故・病気など)
- 失踪宣告が確定した場合
「突然のことで何をしていいかわからない」という方も多いですが、まずは相続人が誰かを確認することが第一歩となります。
相続人の範囲とは?
法定相続人を理解しよう
相続人とは、法律上、被相続人の財産を引き継ぐ権利がある人をいい、相続人は民法で定められています。これを「法定相続人」といいます。
法定相続人は以下のように順位が決まっています。
法定相続人の優先順位
法定相続人の優先順位
- 配偶者(常に相続人になる)
- 第1順位:子(または孫)
- 第2順位:直系尊属(父母・祖父母)
- 第3順位:兄弟姉妹(または甥・姪)
具体例で考える相続人
たとえば、被相続人に「配偶者と子ども」がいる場合は、配偶者と子どもが相続人です。
子どもがすでに亡くなっている場合は、その子(孫)が相続人になります。これを「代襲相続」と呼びます。
配偶者以外に子どもがいない場合は、次に親(直系尊属)が相続人となります。親がいない場合は、兄弟姉妹が相続人となります。
相続人がいない場合
稀に相続人が1人もいないケースもあります。この場合、特別縁故者が財産を受け取ったり、最終的には国庫に帰属することになりますが、そのためには別途裁判所を介した手続きが必要となります。
相続人を特定するには、亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍を取寄せる必要があります。
遺産とは?
相続財産の種類を知る
次に、相続の対象となる「遺産」について見ていきましょう。遺産にはプラスの財産もマイナスの財産も含まれます。
プラスの財産(相続財産)
- 現金・預貯金
- 不動産(土地・建物)
- 株式・投資信託・有価証券
- 自動車
- 貴金属・美術品
- 貸付金(他人に貸しているお金) など
マイナスの財産(債務)
- 借金(ローンやカードローンなど)
- 未払金(医療費・税金など)
- 保証人としての債務
相続の対象外となる財産
- 生命保険金(受取人指定がある場合)
- 祭祀財産(仏壇・墓地など)
- 死亡退職金(遺族給付金として支払われる場合)
生命保険金は「受取人」が指定されていれば、相続財産ではなく、受取人の固有財産となるのが原則です。
相続人と遺産の把握がトラブル防止のカギ
遺産を相続人で分けるためには、遺産分割協議で決めることになりますが、この遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があります。
しかし「誰が相続人かわからない」「財産がどこにどれだけあるかわからない」となると、話し合いがスムーズに進みません。
一人でも遺産の分け方に反対する相続人がいると、遺産分割協議は成立しませんので、普段から付き合いのない相続人がいる場合などは、トラブルになる前に弁護士に相談することをお勧めします。
また、相続税の申告にも「相続財産の正確な把握」は欠かせません。後から隠れた財産が見つかると、追加で税金が課せられるケースもあるため、漏れなくリストアップすることが重要です。
トラブルを防ぐための対策
ポイント
- 相続人調査(戸籍謄本の取得など)
- 遺産目録の作成
- 遺産分割協議の作成
まずは、相続人と相続財産を確定させましょう。そのうえで、どの財産を誰が相続するのかを相続人全員で話合い、決めていきます。
そして、話合いの内容を、遺産分割協議という書面で残しておく必要があります。
トラブルを防ぐためには、初動が大切です。相続人間のはじめのボタンの掛け違いや感情的な対立が、のちのトラブルの原因になることも少なくありません。
初期の段階で、正しい法的知識を持ち、無用なトラブルが生じないようにすることが重要です。
また、トラブルになりやすい類型もあります。次に該当する場合は、相続発生前に弁護士に相談することをお勧めします。
トラブルになりやすい例
- 相続財産が不動産しかない。
- 前妻の子がいる。
- 相続人が兄弟である。
- 普段付き合いのない相続人がいる、遠方の相続人がいる。
- 親(被相続人)の介護をしてきた相続人がいる。
- 生前に親から多額の援助を受けた相続人がいる。
- 生前に親の預金を使い込んだ相続人がいる。
まとめ:まずは相続の「基本」を押さえることが大切
相続に関する知識は、事前に知っておくことで不要なトラブルを防ぐための武器になります。
今回の記事では「相続人の範囲」と「遺産の種類」について解説しましたが、これらは相続対策の第一歩です。
相続人が誰なのか、どんな財産があるのかを早めに確認し、必要に応じて専門家に相談することが、家族円満な相続の秘訣といえるでしょう。
相続人となる兄弟姉妹が多い場合、相続人がどこに住んでいるかもわからない場合、前妻の子が相続人になる場合など、ご自分では相続人調査に手間がかかったり、難しい場合があります。亡くなった方の相続財産を把握していない場合も少なくありません。
そのような場合は、相続人調査、相続財産の調査を専門家に任せることもできます。特に、トラブルの発生が予想される場合は、相続人調査、相続財産の調査の段階で、弁護士に相談することをお勧めします。
相続は初動が大切です。トラブルにならないように正しい法的知識を持ち、円満な遺産分割をしましょう。